夕暮れのズルタニ > ゆめのホームランバー:第五節

少ないコズカイを最大限に活用

ゆめのホームランバー:第五節



いかにして「谷鶴」は「ズルタニ」と呼ばれるにいたったか。
クジを引かせてはもらえても、開封をさせてもらえないのだ。
そう何等だったのかは不明だったりするあたりから
はずれてしまった挑戦者の間で「ウサンクサイおばちゃんじゃ」
と噂がまきおこりそいういう呼び名になった節もあるのだ。

そのクジをひとつの例としてお話したい。
ズルタニで三角クジを手にとり、今日の運試しを
試みた小学4年のマコト君がいた。彼の小遣いは1日50円。
30円の名糖ホームランバーを買って、味わい半分で
そそくさとその角張ったバニラアイスを食べて
棒をねぶる(尾道の言葉でしゃぶるの意味)。

可哀想に彼は既にギャンブルの蜜を猿のようにむさぼる
癖がついてしまっていたので、ホームランバーの中心の
木の棒に、うっすらと「ホームラン」と焼き印が
ついている妄想を描きながらでないとアイスは
食べられない身体になっている。
それを知っていて友人のツトム君は「もし2塁打ゆうて
かいてあったらなんがもらえるんかのう」
当時の僕等のこの手の会話が強烈に不気味だったのは
マコト君はホームランの焼き印の事で話は聞いていないのに
ツトム君は2塁打をかわきりに、ボンフライとか満塁ホームランとか
止まらない盛り上がりをみせてるあたりに鍵がありそうだ。

しかしあいかわらずマコト君は棒の中心にキリタンポのように
残ったアイスをなめながら、恍惚な瞳でうなずきもしないのだ(笑)

人間というのは90%危険でもフグも食べるしエベレストにも
登る生き物なので、マコト君はもしもキリタンポがきれいに
なくなったあと、その恍惚の瞳に両面シミひとつないきれいな
木の棒がうつっても、気持ちをすぐに次を求めるように切り替え
できる生き物なのだ。

「なんじゃ、はずれじゃ」マコト君は表情ひとつ変えずに
残り20円にフグのコリコリした食感やチョモランマの頂から
見下ろす下界をたくすために、ズルタニの奥深くに入っていく。

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