夕暮れのズルタニ > ハリーアップ光線発射:第九節

僕らの一日は短い、急げ!

ハリーアップ光線発射:第九節



子供の世界において駄菓子屋のおばちゃんというのは
ルールであり、ジャッジであり、マスターなのだった。
最も子供に近い大人、それが駄菓子屋の、ズルタニの
おばちゃんだった。その人の一言は僕等の中に
小さくない影響力をもっており、これは今の塾帰りの
コンビニでは絶対に遭遇しない存在だと言っていいだろう。

もはや腹をくくってクジをひくしかない。
マコト君は口にくわえていたホームランバーの棒を
左手に持ち替えて、大げさな深呼吸をひとつした後
右手でネチャネチャになった20円をおばちゃんに手渡し
クジの入った箱に手をつっこむと何故か斜めに天井をみた。

ズルタニの中に緊張が走り、まるで小太鼓が16ビートを
刻むが如く静まりかえる一瞬だ。

子供達のなかには、この姿勢で30秒以上ねばって
中のクジをモロモロにしてしまう連中もいる。
ウナギのつかみどり風に、箱のなかでクジがのたうちまわる
かのような大暴れで対決する様という状態だろうか。

もちろんクジをモロモロにされては困るズルタニのおばちゃんは
激しいオーラでもって急がせる。これを仮にハリーアップ光線と
呼ぶ事にしよう。

マコト君はハリーアップ光線が大の苦手で、気持ちが悪かったので
光線が弱いうちにさっさとクジを選びだし、高くかかげた。
「すげーでー、ぜったい1等でー」ツトム君はまだ開いていない
クジにむかってそう叫び、周囲の子供達の視聴率を高める
技をくりだした。だった。

ついにクジを手にしたマコト君。さあ何等なのか?!

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